Bird strike(車窓のひと)
恋月 ぴの

一羽の鳩が飛んでいた
わたしの乗る列車を追いかけるように

無機質な四角い窓枠のなか
黒いコートの肩越しに
羽ばたき続ける
白い鳩の





線路を渡る架線を巧みに避けて
鳩は飛んでいた

誰かに伝えたかったことでもあったのか
希望の
明日への思いは

低く差し込む陽射しを翼に浴びて

一羽の鳩が飛んでいた




あなたが存在するとして
あなたを信じるとして

現実と向かい合うことなく
体を逸らすことになるのだとしても

ひとは何を祈る

幸せ
明日の幸せ

やせ細った腕を伸ばし
たわわに実った果実を安易に掴み取ろうとする




やがて鳩は見えなくなった

伝えたかった思いは伝わったのか

冬ばれの空
何ごとも隠しようの無いほどに晴れ上がった



あおい空

四角い窓枠に切り取られた

あなたの意思






自由詩 Bird strike(車窓のひと) Copyright 恋月 ぴの 2012-01-09 17:27:32縦
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