即興(夜空への祈り)
橘あまね

飛べない魚が
雲の中から這い出してくる
ふるい戦闘機のなきがら
双胴に牡蠣殻のいちめん

酷使されたラジオから
喉をさいて響く歌
あたたかいミルクを呼んで
冷たい夜に泣く子猫

水滴は涙のかたち
夢にみた丸み
枯れた井戸がたたえる
育まれるべきだったもの

日めくりをちぎりとる
指先に記憶して
声になれなかった祈りを
夜明けの方角にかざす


自由詩 即興(夜空への祈り) Copyright 橘あまね 2012-01-05 17:36:28
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