静かなスクランブル
銀猫

かこぉん・・・と靴音
軋む、非常階段


感情を言葉に変えた瞬間から
わたしは
燃えないゴミのように無機質な
存在に変わってしまうのだろう

語りすぎるのは
良くないことだ
見つめすぎるのも
良くないに違いない

伸ばした髪を
細心にシャンプーしてみる
きう、っと音たてて
毛先から滴が落ちると
そこには名付けようのない湖が出来て
半透明のさかなが泳いで見える


軋む髪
痛む左の胸
鎖骨から下は
何を考えて暮らしているのだろう

四月になっても咲かない桜と
いちにち違いの早生まれは
何処か底のほうで
繋がっているのかも知れない

わたしのからだに残る痣は
今日も紅く花咲き
誰かに探してもらいたがっている
だからきっと
拒まれる、眠り


そこに雪柳が枝垂れて
わたしは階段を下りて行けない







自由詩 静かなスクランブル Copyright 銀猫 2012-01-04 03:14:08
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