いのちの断面
ただのみきや

妻にまかせずに
自分の手で一つ一つ
持っては重さをしらべ
虫食いはないかしらべ
一番ずっしりとして
長持ちしそうなやつを
一個だけ選びだした
家に帰り まな板の上
そのきゃべつを一刀両断にすると
断面図は脳のそれに似ている

昔片頭痛がひどくて医者に行き
頭の中の写真をとった
医者は 「きれいなのうしてますよ」
と言っていたが
どうきれいなのかはわからないままだった

魚をさばくときよりも なぜかもっと
いのちを感じさせる断面図
赤い血を流すことも
痙攣したり 
呻いたりすることもなく
おとなしく屠られてくれる
きゃべつが
ちょっとだけ
いとおしいかった


自由詩 いのちの断面 Copyright ただのみきや 2012-01-02 23:38:56
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