新しさを知ってゆく月を美しいと詠む國で
たちばなまこと


腕をつくフォルム
眼球と二重瞼のバランス
背中に手を添えて
差し伸べるように
手のひらを奥へ傾ける
黒髪がしなり散らばる感触
床へ促す一連の流れを素描しながら
降りそそぐ熱い雨を
受けてとめてゆく

海辺に住もうか
魚が好きだからね
釣りも出来るし
夏はすぐに泳ぎにゆける
山も好きだよ
山菜採りやきのこ採り
木登りをして
丘の牧草地と一緒に
風になれるよ
草原だってあぜ道だっていい
街だって好きなんだ
どこに息をしても
眩しくて
輝いて
舞を舞うように
美しい手招きを
交換する日々よ

手が
あたたかく
ちからが灯る
くちびるが
やわらかく
湿り気を帯びて
肌が
隙間なく
毛穴のおしゃべりを聞く
撫でつけるたびに
安まる鼓動
触れ合うたびに
高まる空
向かい合うたびに
新しさを知る
螺旋を登る
時の回廊
円周を延ばしながら
歩いていけたなら

藍色を呼ぶ月が登ったら
世界に呼吸を並べ
手をつないで
祈りを重ね
数え切れないほどの
龍をたてる
胸に浮かぶ肋骨に
人差し指でなぞる
厚みに腕を巻きつけて
声を押し当てる
不意に言うのね
爪をたてたいよ
いいよ
たてるといい
好きなだけ
刻むといい
月を美しいと詠む國で
新しさを知ってゆく
ふたりで
良かった





自由詩 新しさを知ってゆく月を美しいと詠む國で Copyright たちばなまこと 2012-01-02 22:49:55
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