虚構の海域(転覆丸哀歌)
ただのみきや

さあ 帆を上げよ
出航の時が来た
一かけらだって未練を残すな
すべては過去の出来事だ

さあ 目を沖に向けろ
出航の時が来た
呼び止める声など幻想だ
港にわれらの取り分はない

さあ 海鳴りの音を聞け
早くも歓迎の嵐が来る
あの暗雲の真下こそ
われらの海への入り口だ

いざ行こう 勇敢なる乗り組みよ
絶望の石ころを胸に抱く
見限られ 見限った者たち
こころは死人の者たちよ

いざ進め 転覆丸
虚構の海域を目指し
波の咢を超えて行け
茫漠の海に咲く
ふりむくことのない
歌声を追いかけて



自由詩 虚構の海域(転覆丸哀歌) Copyright ただのみきや 2011-12-30 22:07:12
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