師走の包絡線
あおば

              111230



誰でもすぐ書けますと
エッセイ教室のお誘い電話が鳴り響く時に
夾竹桃の花弁がほろりと落ちて
足下に赤い輪郭を記す
ほろりと落ちる度に
輪郭は少しずつ重なってはズレて
次第に大きくうねる波状になって
揺蕩う小舟の行方を見守っているようだ
.....

夾竹桃がすっかり散って秋が来る
芸術の秋だ!
うちの教室の先生は苦労人だから
自転車で転んでもただでは起きない
ハンドルが曲がったか
クランクが曲がったか
サドルが横を向いていないか
気になるところを一通りチェックしては
服の埃を叩き
大丈夫と鷹揚な笑顔で右後方を確認し
ゆっくりと漕ぎだすんだ
その頃には異様な音に集まってきた人達も居なくなり
最後まで鵜の目で注目していた作者もなにも起こらないからつまんなくなり
結局、カラスの勘三郎を除くと周囲には誰もいなくなり
黄金の暮色に染まっていくんだ
ゆうひのさしてやまのはいとちこうなりたるに、からすのねどこへいくとてみつよつ、 ふたつみつなどとびいそぐさえあわれなりと
呟くのは何処かのインチキ野郎だけとなり
月の出にはまだまだ時間があるから
ちょっと一杯付き合ってくれないかという人も忙しいこの辺りには居ないのは無論のことである
.......

かのようにですます調に飽きても
歳末投げ売り大会に立ち寄って
要らないものを買わないで!
すぐに帰って!とメッセージが鳴った







「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作



自由詩 師走の包絡線 Copyright あおば 2011-12-30 19:25:51
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