トワイライトエクスプレス
小池房枝

 小さな文章が書きたいので書いてみる。
 以前、部屋から線路が見えるアパートに住んでいた。普通の各停や急行や貨物、それらに加え、トワイライトエクスプレスが走っていた。大阪から日本海側を北海道まで行く夜行寝台。いつも見ているうちにいつか乗ってみようと思うようになり、実行した。
 寝台車には消灯時間というものがある。それを過ぎてからも、デッキから窓の外の夜など眺めていた。寝台車には車掌さんという人もいる。車掌は通りかかって開口一番、「ああ、びっくりした。」
 ジーンズのベルト通し部分の、大きな安物フェイクファーの真っ白なしっぽ型キーホルダーが真っ先に目に入ったらしい。「切符見ますか?葉っぱだったりして。」「いえいえ。」そんなやりとりの後、彼はまた次の車両へと渡っていったが、出会いの最初のその瞬間、どうびっくりされたのかを考えたことを覚えている。
 終点より先には青春十八切符を用意しての旅だった。
 小さな文章一回目、おしまい。


散文(批評随筆小説等) トワイライトエクスプレス Copyright 小池房枝 2011-12-29 00:34:18
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