ベクトルと結晶体
橘あまね

墨染めの空を映して
ガラス、ガラスの群れ
強い光の訪れを
救済に灼かれる日を
待つ

立体交差の雑踏
四方向に
連れ立つことなく
分かたれることもなく
人々は歩いていく
定められて
旅をする容器

不可逆の
意思をはらんで
鉱石たちの
矢印、矢印、
立ち止まることが許されないなら
駆け出してゆきたい

セピア、光の航跡
思い出の刹那
気まぐれな風に妬いても
ぼくたちは、
足あとの記録をつづける
モバイルの啓示


自由詩 ベクトルと結晶体 Copyright 橘あまね 2011-12-25 11:30:05
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