春を待つひと
恋月 ぴの

誰もが幸せであることを望み
それに見合うだけの不幸せを我が身に背負う

故に生きることは辛く

苦しい




ふと目覚めれば凜として未明の寒さ厳しく
曖昧では済まされないこと知りつつも

北風に弧を描く白い首
羽を繕う渡り鳥へ思いを託す




明日は訪れる
等しく誰のもとへも

不確かな手触りのままで

それでも伝わってくるのは
生きる限り日々歩まざるを得ないこと

いつまでも岸辺に佇むことは許され得ないこと

吐く息は白い

物憂げな溜息か
生きる故の喘ぎなのか

渡り鳥は鳴いた
曇天の

岸辺に張った薄氷の




春になれば

その思いで一心と
頭上に振りかざした鍬を振るう
まるい背中は力強くも

「今しばらくは生きながらえていたい」

敢えてそんな言葉を口ずさむ







自由詩 春を待つひと Copyright 恋月 ぴの 2011-12-19 19:09:38縦
notebook Home 戻る