セントエルモ・シンドローム
たりぽん(大理 奔)

いつかうみに流れつく
地下水を求める根のよう
暗闇の先に
冷たい潤いを求めても
指先、未完成のまま
そらに手を伸ばす枝
遠いひかりをからめて(雲に内緒で)
無性に全部、欠けてしまったら
それは
欠けていないことに気付いて
結局影ばかりを追っている
夜が眠らないのは
やさしく寝ているやつが居るからだ
うみが眠らないのは
やさしく寝ているやつが居るからだ
そして許して
眠らないものは
いつしか明日という別名で
やさしさだけではとどかない行方に
薄っぺらな切手を貼って
投函する
根は届くだろうか枝先よりも遠くへ
そらへ飛び込む鯨のように
息苦しい勇気
涙じゃない
しおからいうみから
そらへ生まれただけ
さあ、鳥たちの星座盤をまわして
指先でひとつづきの物語を追う旅に出る
嵐は来るだろう?
そんなことは
とうの昔に知っているさ


自由詩 セントエルモ・シンドローム Copyright たりぽん(大理 奔) 2011-12-19 00:24:58
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