夜をまたいで
木立 悟





あきらかなひとりを
あきらかなひとりにひもといて
明るすぎる街
誰もいない街


雨の爪
左目から背
骨から骨
痛みの無い痛みの外の
奮え 奮え


脊髄の海に
花は廻る
縦の泡
水銀の柱
羽という病
骨に咲く緑


恒星と月のあいだ
ひとつのしるし
しあわせは多くないだろう
風に冠を置くだろう


遠くあたたかな空白から
亡霊の花が聞こえくる
ひとつ咲くたび
ひとつ 遠去かる


見えないものに触れるように
ふたつのくちびるは近づき 止まる
雷鳴が鉄をくぐり 
未明は未明を終える


指の先には
蛾の花の音
系統樹には無い
よろこびの跡
進化まつり進化まつり
招きつづけて


雨のなか 光をひろい
帰る場所を捨てていた
橋のむこうには次の橋と
次の夜の子が横たわっていた


冷えた左脚を
浪に向けていた
人は人のまま
灯に帰ることなく
海に落ちる虹を聴いていた

























自由詩 夜をまたいで Copyright 木立 悟 2011-12-16 19:52:19縦
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