イメージという名の傷跡
ただのみきや

 決して建て終わることのない塔がある
 光をまったく反射しないその塔は黒い輪郭に
 太古の文様を刻んでいる

 日の光のもと 
 それは実体のない白い影となって横たわり
 存在を忘れさせる
 が
 心におびただしい黄昏が這い上がってくると
 おびき寄せたように目の前に立つ 
 ことばに浮かんだ蜃気楼のように
 心臓は凍った時計と入れ代わる

 時折
 黒いコートの女に姿を変えて
 大理石にはめ込まれたオニュキスのように
 こちらを見つめている
 声もなく
 表情もない
 絶対零度の抗議

 だが
 そのコートの下にはただ
 イバラが生えていることを知っている
 
 決して建て終わることのない塔がある
 光をまったく反射しないその塔は黒い輪郭に
 罪悪と苦悩を刻んでいる 
 


自由詩 イメージという名の傷跡 Copyright ただのみきや 2011-12-03 00:12:11
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