痴呆の季節
乾 加津也



          指関節をなんど曲げても
          言葉がどこにあるか
          わからない


人類の要素のひとつ わたくしも
紙とペンで書いた言葉を 今は
平原に向かって 打つ


          古いノートPCのバ
          ッテリーを強くする
          ため、初めて完全放
          電で停止させた、充
          電ゼロのサインを約
          十五分も発信しつづ
          けたあと、いよいよ
          わたしも疲れたよ、
          きゅーんと事切れた


これからを
充電をはじめるまでを
痴呆の季節と呼べるだろうか
襟を正すテクノロジーは
永遠からも貶められる
繁茂した
言葉(きごう)の気根に見放され
これまで一度も袖を通したことのない
みずからの
末梢神経をひらきつつ



          言 葉 が ど こ に あ る か

          言葉の余有素(りんかく)が天窓からふりそそぐ
          のか

          向き合う
          わたくしに
          滑り台の R のように
          ささやくように
          傾くように


自由詩 痴呆の季節 Copyright 乾 加津也 2011-11-29 17:51:13縦
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