旬なひと
恋月 ぴの
ひろげたお店を片付ける
そしてトイレで用を足したなら必ず水を流す
便器の底を覗けば
生きてきた私自身の素性が判る
※
早や店じまいの季節になったものだと
ひろげすぎた店先を見やる
大風呂敷とは違うし
片付けられない女とも違う
喘ぐような呼吸を繰り返す度に
私自身の痕跡はただただ拡がるばかりで
今さっき、ひねったばかりの排泄物が
家族写真のまんなかでぎこちない顔して笑ってた
※
かぶっていた猫を脱ぐ
お化粧ぐらいしておけばよかったのにと
言い訳めいた独り言
何かをすれば何かを忘れ
何かを忘れれば何かを思いだす
今日一日やり過ごせるのならそれはそれで幸せなんだと
収拾のつかなくなった人生を見てみぬふり
ひろげたお店を片付けよ!
いつまでもぐずる私自身に号令をかけたなら
拍子木を打ち鳴らしての店じまい
自由詩
旬なひと
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恋月 ぴの
2011-11-28 15:33:47縦