旬なひと
恋月 ぴの

ひろげたお店を片付ける

そしてトイレで用を足したなら必ず水を流す

便器の底を覗けば
生きてきた私自身の素性が判る




早や店じまいの季節になったものだと
ひろげすぎた店先を見やる

大風呂敷とは違うし
片付けられない女とも違う

喘ぐような呼吸を繰り返す度に
私自身の痕跡はただただ拡がるばかりで

今さっき、ひねったばかりの排泄物が
家族写真のまんなかでぎこちない顔して笑ってた




かぶっていた猫を脱ぐ

お化粧ぐらいしておけばよかったのにと
言い訳めいた独り言

何かをすれば何かを忘れ
何かを忘れれば何かを思いだす

今日一日やり過ごせるのならそれはそれで幸せなんだと
収拾のつかなくなった人生を見てみぬふり

ひろげたお店を片付けよ!

いつまでもぐずる私自身に号令をかけたなら

拍子木を打ち鳴らしての店じまい






自由詩 旬なひと Copyright 恋月 ぴの 2011-11-28 15:33:47縦
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