ぺトルウス・パウルス・ルーベンス
m.qyi

ぺトルウス・パウルス・ルーベンス


あなたは偉大な企業家で
美食家で信心篤く
明晰な頭脳の持ち主で
そして美しい奥さんと、可愛い子供がいた
そんなことはどうでもいいんです。
色彩と動きと線のシンフォニーをかき鳴らした
光と闇のドラマを大画面に映写した
世界中に名を馳せた
そんなことはどうでもいいんです。
あなたが自分の手で描いた
手のひらほどのあの空の
遠くの風車小屋のはるか向こうに沈んでゆく
赤い夕日の ほんのかすかに見える
葦の水辺の
爪の先ほどの小さな切り株に
休ませてはいただけないだろうか
ほんの少しの時間でいい
あそこへ
腰をかけてはいけないだろうか
そして、
夕日が沈む
そのほんの短かな時間だけ
静かに
一人泣かせてはもらえないだろうか。




自由詩 ぺトルウス・パウルス・ルーベンス Copyright m.qyi 2011-11-13 22:54:18
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