貝殻のような夜
Lily Philia




白い砂浜をあるいていると
神さまがいらしてね
あたしのあたまんなかに
鳥をおいてった。
その鳥がいうには
夜のむこうがわには
せかいのおわりがあってね
あいする
ひととものが
けっしてさめない夢を
みつづけているんだって。
雨上がりのにおいをおいこして
波の残骸をけってあるく。
鳥がいうにはね
その
ながいながい夢を
さがしているんだって。

 あたしの声「ただそれが
 あたたかくあればいいね。」
 鳥の声「花はどうやってねむりについたんだろ。」

だれもしらない
だれもしらない場所から
やってきた
死んだ人と話す。
死んだ人と旅をする。
死んだ人がわらっている
その風景には
花がこぼれている。
川のむこうに
淡いひかりがさしてくる。

おやすみ。
おやすみ。
こわいゆめにであわないように。
おやすみ。
かわいい小鳥たち。
天国へ続くレールは
すぐそこだよ。

その夜に
死んだ人と
汽車に乗ったことを
思い出していた。

あたしはどうやってねむりにつくんだろ。






木(ふたつめの夜)



あたしは
植物みたいに
生きたいと
思っていたけれど
木のようにだって
ここに
居続けることはできない

そこに
ひかってた
まばゆく飽和した
ねむりの底で
しずかにひかっていた
ほどかれてゆく
ゆるやかなひとつづきの
何かの行進のなかで
あたしは
水のなかでしか
呼吸のできないサカナのように
なげだされて
ちいさく身をよじる
死んだひとたちと話をするように

言葉にできることと
想像できることは
ちがう

みえるもの
みえないもの
みえているもの
みえていないもの
みえなくていいもの

あたしは
上等の
いっぽんの
木だった

つかみあげられた
視界からこぼれた太陽が
虹のようだった

その木に名前はない








自由詩 貝殻のような夜 Copyright Lily Philia 2011-11-09 07:21:56
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