HOPE
丘野 こ鳩

動機のないことが肝心でした
ことばを失わなければ意味がない
そんなふうに思っていました、つよく
それで、いまも

いまも手をのばしている
両手で頬を、挟み、包み、掬いとりたいと、考えています
つよく
絆に強度などはなく
すばらしい入口の、分け目を、探っている
挨拶を、している
ゆっくり、ていねいに、
こうするしか、
ないという、方法で
存在する触覚を、みとめている
互いが、どうしようもなく、ひとりで在ることを、ゆるしたいので
折りたたみ、お腹のポケットにしまっている
ハンケチみたいな、その概念を、ひらいてみせ、ゆびさし説き、ほどき、
糸屑にして、交換しあう
(はなれれば、交換したことさえ、忘れてしまう)

両の手で掴みとる
(つめこまれた銀杏や、胡桃や、椎の実、、)
素敵でもない幸運の木のしたに寝そべって
昼寝みたいにうかうかするから
じぶんのたましいを、体から逃がしてしまう

秋の陽射しがそそぐ光に
ひょうめんのあちこちを焼かれている
(ただれるのに晩まで気づかない)

ねえ、くらやみのバスにのって
ひとりで、たましいの去った、体を撫でうつりこんだ方々の風景をしょって
どこでだって声は がらんどうを撃って、鳴り響くねえ
わたしの声は星にぶつかり、暗黒で、爆発していました
路地に瘡蓋を落としています(これは花びら)(と、呼びたい。枯葉ですが…)
きっと迷子にはなりませんね
戻れるのですね きっと
手はふたたび、つながれますよね
はぐれたたましいはここを辿って、きっとわたしを、突きとめますね
ある晴れた秋の日にでも
あるいは小春日和に、祟られる日にでも


いま、ここに ことばのあることが、意識の惨劇を生みます
この距離、息を届かせ、ルールに乗っとり、投げねばならぬ、のが、うとましい
ことばを失わなければ
なんの意味もない
そんなふうに つよく、思っている、ものですから

諸手をのばす、はさみ、つつみ、ひきよせ、
のっとりたい、あなたのことば、風景、こえ、あなたさえまだみぬもの すばらしい!
ゆびのはらにふれていく
ああ、くずれる、ときみが、いう

動機の、ないことが
肝心でした
ことばを失わなければ意味がない
そんなふうに思っていました、つよく
いまも
あなたにそれを、ただ、伝えたい

これとそれと、いのちをつなげます
いのちでしかない ということを
あなたに、わたしは、のぞみます
だから、伝えなくちゃあならない
にんげんをいろどる、魔法のいっさいを、すてて

手が生え、足が生え、上下する
ここに

たましいが
あったことなど
ないんですよ 


自由詩 HOPE Copyright 丘野 こ鳩 2011-10-25 11:28:28
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