mash mellow
山中 烏流





指の腹で押し潰す頬の、
薄皮一枚先を流れ去る
君はすっかり青ざめてしまって
嘘のような住宅街に漂う金木犀の香りと
ぶら下がる総菜屋のコロッケは
いつだって口論を止めずにいるから
たまらずに
家を飛び出して
君は空を飛んでいった


飛び越えた塀の向こうで
指切りをするための指きりをしよう

一回交わったら朝で
二回交わったらもう終わる程度の
毎日のために


血生臭い、いくつかの秒針の間を抜けて
そこに君はいないのだけれど
甘くて柔らかい
火を近付けて溶かしてしまえばいいのに
教会のステンドグラスは
割られるために作られたと言うし
誰かが、



  
/焚き火の焦げた煙




角の数件先の庭で燃えるのは
繋ぐことに疲れた私たちだというのに
君がいつまでも戻らない

雲が切れていく

甘い、香りがする









自由詩 mash mellow Copyright 山中 烏流 2011-10-02 22:40:07
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