時間旅行
umineko

全部全部ネットの上にあるなんて思うのは大間違いだ
本当に伝えたいことはこんな画面の中にはないのだ
夕暮れの空の色がグラディエーションで変わっていく美しさを
言葉で表現することはどだい無理なのだ

私は

不可能を可能にしたいと思っているわけではなく
何かを成し遂げたいという強い野望を持っているわけでもない


グラディエーションで変わっていく空のありさまを
たとえばそれを誰かと見上げたことなどを
水まきするホースの向こう側に虹を見たことなどを
それは私の角度しか見えない 
それを誰かと共有もできない

屈折率の違いから水滴のアールを入射角として
自然光が多色光として分離される

それよりも
夏の匂いが

そらいっぱいの水滴で冷やされていくその有様を
誰とも共有できない
そうだ
それはたぶん私だけの

グラディエーション

暮れてゆく空の哀しみを私はいつかあなたのそばで
哀しみも寂しさもひとりぼっちで
だけど

時間は正直に流れていくよ
あなたと
私が

隠している心のひだをひとつひとつ重ね塗りして
同じ空を同じ角度
同じ意味で分け合えるなら

そこまで

私はゆっくり歩いていこう
 
 
 
 


自由詩 時間旅行 Copyright umineko 2011-09-24 05:28:52
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