しあわせトンボ
umineko

ほら
やわらかな終わりがきたよ
やさしい
天使の顔をして

私は
急に思うのだ
三途の川の水面にも

低く高く
トンボの群れが
乾いた
秋を告げるだろうか

ワシは
車を取りにいかにゃあいけん

病床の
父の口から
山あいの地の地名がこぼれ
そして
しずかに閉じられる

ああ
私も帰るのだろう
黄泉の流れの
水面をみつめ

トンボ

折からの川風に
逆らうように飛ぶ姿

同じ記憶は
ひとつとてなく
それでも
ここに飛ぶ意味を

教えて
私が流れる前に

やさしいアローで貫いて
 
 
 
 

 
 
 


自由詩 しあわせトンボ Copyright umineko 2011-09-18 00:31:00
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