呪文
あおば

                 110916




○○地方は120ミリ
新たな水害も予想されますから
雨の降り方にはご注意ください
天気図の指し示す先には
2つの台風が同心円を描き
確かに蒸し暑いのは彼等の仕業と納得できた
日中の暑さは
残暑だと諦めるが
夜中の暑さは
残暑ではない
これは夏が居座っているのだ
居住権を与えたつもりはないが
長い夏の季節のうちに
いつのまにか時効が来たようで
今ではもう追い出すわけにも行かず
エアコンのスイッチを入れようかどうか迷いながらも
眠りにつくまでの僅かな時間を不快に過ごせば
入れなくてもよいのだと
入れないで我慢する
やせ我慢の土地柄なので
節電意識も遺伝したのか
3才の子供も汗疹を息でふうふうしながら我慢している
それを見てはなんでスイッチが入れられよう
地デジ化していないアナログテレビの上にはくるくるの蚊取り線香
奴等の季節はこれからだ言うように呪文の煙を立ち上げて
すべての苦情を却下する
少しの隙間からも
網戸を拡げるように入ってきて
ブンともいわずに刺すんだ
痒いよう
暑いよう
眠くないよう
譫言のように唱えながら
眼をぱっちり開け
天井を凝視する
彼はもうじき眠るだろうと
親の私は確信したが
信じていないあなたは
ずっとずぶ濡れさ








「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作を改題



自由詩 呪文 Copyright あおば 2011-09-16 22:17:03
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