大道芸人が見た風景
itukamitaniji

大道芸人が見た風景

自分の名も忘れた浮浪者か それとも今の暮らしに落ち着くか
恐らく成れの果ては せいぜいそんなところだろう
いつか絶対に 目を覚まさないといけない時が来る
期間限定の夢を見ながら この街で暮らしている

狭い路地をすりぬける風は 生ぬるい臭いを運んでくる
誰かが捨てた夢の遺骸は 蹴飛ばされて踏んづけられて
似たようなオチを繰り返して それでも新しい花は咲き続け
これから盛りを迎えるか それとももう枯れてゆくのか

これまで生きてきて 何度も見てきた場面がある
名を呼ばれた者の歓喜と 選ばれたなった者の涙
足して引いて結局は零 そうやって世界は創られるんだよ
運命だとか才能だとか そんな言葉で片付けながらね


存在を誇示するわけではない 誰を照らす目的でもない
あのネオンみたいになれたら こんなに苦しむ必要は無かった
それでもずっとここに立ち続ける 誰かに見てもらいたかった
そしていつかひっそりと消える あの光がそうであるように

大好きだとか愛しているだとか そんな陳腐な言葉じゃ
簡単に片付けられはしない 小さな戦いがここであったこと
時代という濁流に流されながら 誰かは笑って誰かが泣く
そうやってみんな生きてゆくんだよ 世界という大きな舞台の上で


自由詩 大道芸人が見た風景 Copyright itukamitaniji 2011-09-11 21:22:45
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