風景の記憶
真山義一郎

風景は記憶を宿している
だから俺は
ゆるゆる
その風景に
流れ込む

いつも路地裏
猫がいて
丸くなって目を細くして寝てる
気持ち良さそうに

俺は雪駄で歩いていくだろう
そうだ
季節はいつも

太陽が百個くらいあって
光が爆発してる

福山雅治によく似た
イケメンの山本さんが笑ってる
んで、ヤリマンの美穂がいて

そして、
お前がいる
あの三階の小さな部屋に

お前は派手な花柄のTシャツに
黒いスパッツで
下半身に張り付いたそのスパッツに
お尻に
曲線に
俺は頬ずりしたくなる

お前は笑う
昔の姫君のような顔で

お前は人妻だったけど
俺にとってはどうでもいいこと
二人、並んで
「ごっつええ感じ」見て
一緒に笑ってることの方が
ずっと、ずっと、大事だった

あれから十六年ぜ
嘘みてえだ
十六年経ったってことが嘘みたくあるし
お前と過ごした
あの日々が
嘘みたいに思える時もあるんだ

だから、俺はそれを確かめたくて
十六年ぶりに
あの街を訪ねる
愛とセックスと、
憎しみと屈辱に塗りたくられた
あの街を

おいおい
廃墟ぜ
ここは

街は再開発という破壊のあとで
あれもこれも
新しい色に
ぶっ壊されてる

でも、俺は
路地裏を見つけるのさ
猫がいて
丸くなって目を細くして寝てる
気持ち良さそうに

俺は雪駄で歩いていく
そうだ
季節は今も


でもよ、
お前と過ごした
あのアパート
カラオケボックスになってて
しかも、そのカラオケボックス
ぶっ潰れてて

でも、俺はやっぱ三階の
あの窓を見上げる

窓から
お前が顔を出して
笑ってくれんじゃねえかと思って
昔の姫君みたいな
あの顔で

太陽が眩しい







自由詩 風景の記憶 Copyright 真山義一郎 2011-08-23 05:07:47縦
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