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水町綜助


「美しい日本の私」
とでも空にコピーを一本書き込みたくなる
山村の清流でせせらぎに
耳を澄ませながら
いじったタバコを一服
僕はぼんやりと山並みを眺めながら
隣から立ち上る
まるい煙がほどけて
稜線の上、
白んだ
空白に
溶け込んで
消えてしまうのを
重ねて見ている
僕は川縁ぎりぎりに立って、
そいつは、
「長い」と言って
ベルトでたくし上げた
ワンピースに足まですっぽりとくるんで
ずっとはるかな
視線を投げかけている
ようにみえる
手に持ったタバコを
見つめているだけなのに

夜、
触れているの
に、ここにいない
ただ月だけが青く
放射状のかがやきを
足元に照らして
僕は背を向けて見上げて
そいつは頭上はるかに月を戴いて
ひとみはうすく
閉じられている

どんなに苦しいだろう
これがきえてしまう夜に
なりやまない
数えきれず重なる音と
青白い光の中にふわりと
持ち上げられて
あの煙のように

休日、
そいつの家で目を覚ました僕は
そいつが仕事に行くのを見送って
そのまますこし眠って
そいつのほとんどルーツみたいになってる
「おしまい」って名前のマンガ読んで
そいつの働く店で
ココナッツミルクと
ココナッツカレー
「ありがとうございましたー」と鳴くそいつを
働くんだ、とうつむいて興味もないファッション誌をぱらぱらめくりながら聴いて
ジャスミンティー
アイスコーヒー



二こと三こと交わして
また暑い夏に出て
絵みたいな入道雲見て
そいつが昼休憩に入るのを
入道雲よりはすこし下に浮かんでる
丘の上の森まで散歩しつつ待って
蜂がこええからすぐ出て
丘から降りる階段からそいつがいるほう見て
あちいなやっぱ今日

買ってそんで
そいつが帰り道の駐車場で
ラマーズセンター?
だっけ?
へんななまえ
とか思いながら腰掛けて
風が吹いてたから
そのまんま待って
チャリこいでくるそいつ見つけて
ネコ見に行くって言うからとぼとぼあるいて
鈴みてえな声でネコ呼んで
黒猫とその親(ばあさんだっけ)が来て
空が高くて
しゃがんだそいつとネコがマンガみたいで
で、ネコがドブでしょんべんしてる顔が可愛くて
あきちゃったから帰って
だいた

つくりごとみたいに
あのよるか
あのよるのうみかで
なっちゃったみたいで
もうだめだ
あたま
いたい
まいったなぁ
こんなことに
なるなんて
まだ夏
あちいし
おればかだし
そいつ
わけわかんねえし
いるのに
いねえし
やさしいのに
ざんこくだし
じゃんきーなのに
正気だし
ビッチ師範代らしいけど
なんかセイントだし
ゴールドね
わけわかんねえ
こんなはずねえんだけど
とりあえず
このことを
そいつに
つたえなくちゃ
いけないと
おもうから
いう


○△□×○

ああ、とても書けねえ


自由詩 ○△□×○ Copyright 水町綜助 2011-08-22 00:40:26縦
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