なあおまえ笑ってくれよ僕が何度もおどけるたびに
高梁サトル


おまえを失い汽笛が呼んだ
あの海に下りていけばよかったと
願う僕の果ては悲しい
炎天下
糸の切れた凧のように漂う
なあおまえ、笑ってくれよ
こんなにおどけた僕の毎日を

文字を綴っただけの紙切れを
いくら何枚重ねても
インクはだんだん擦れて消えて
消えた言葉は蘇らない
手紙を投げ込んだ暖炉の前で
いつのまにか眠りこけ
朝方冷たい炭のぬくもりに
細い指先は救われる

女はいつもうつつを見詰め
アルコールに耽ることも知らず
男はいつもゆめを見詰めて
アルコールに耽って戯言ばかり
つまらないつまらない生き物だと
言い聞かせ言い聞かせ
空白をまた
うつろな文字で埋める

「アロウ
きみに恋をしていた
僕の生涯が終わるまで
可笑しいだろう
きみはずっといないのに
アロウ
ぼくは恋をしていた
きみの生涯が終わるまで
可笑しいだろう
ぼくはずっといないというのに」

途中下車した駅のホームで
おまえのことだけ思い出す
僕は果てまで行き着くだろうかと
想うたびに哀しみは降り積もる
なあおまえ、ふがいない
ぼくをわらってくれないか
あきるまで
からかうように


自由詩 なあおまえ笑ってくれよ僕が何度もおどけるたびに Copyright 高梁サトル 2011-08-20 03:40:43
notebook Home 戻る  過去 未来