最終バスの風景
山田せばすちゃん

乗る人も降りる人もみな押し黙る小雨にけむる夜のバス停

終バスは寂しからずや乗客は恋人同士と老婆が三人

二人がけのシルバーシートに三人の老婆が肩を寄せ合って眠る

窓ガラス額をつけて若者が恋人に訊く「今度いつ会える?」

交差点の赤信号も滲んでる「会うのはきっと今夜が最後ね」

気の利いた別れの言葉も出ないまま「次降ります」のブザーを鳴らす

年月という名の鑢で磨かれて姉妹のような三人の老婆

雨の中どうぞお風邪を召さぬよう小さな傘を差し掛け合って

若者も老婆も降りて終バスに「次は終点」の案内が響く

終バスの無人の席に明々と「次止まります」のランプが光る


短歌 最終バスの風景 Copyright 山田せばすちゃん 2004-11-17 09:24:51
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