夜を着る
たちばなまこと

背中が痛いよ
見上げればお月様
おなかが重いよ
だから
筋肉を伸ばしたり縮めたりするよ
今夜も
夜を着て

招けば水が湧きいずる
鏡に立木や鷲をうつしながら
わずかに震える芯を見る
私はこうしてしなやかさを求め
何になればよいのだろう

かどわかされるこころ
腰のまわりがしみるような気配
床に背骨のアーチ
天を透かし空を見て
星が降るのを待つ

空想の肢体をなぞる
刹那先を握られたまま
冷房の風が背中を走る
うなじの汗を甲でぬぐって
波に耐えて
発するみじかい溜め息
招いた水がにじんで
やがてさらさらと流れる

夢中でいくつも
筋肉を伸ばしたり縮めたりして
肌に張り付いたチェーン
ペンダントトップが後ろへまわる
はだかに夜を着て
しかばねを真似ながら今夜も
綺麗になりたいと
三度、鳴く


自由詩 夜を着る Copyright たちばなまこと 2011-08-09 21:15:47
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