8月7日(七夕)
ピッピ

ああ、ここは遊泳禁止だったのか
足が着かなくなって気付いたよ
ヘラの母乳は少し苦いね
俺もここでおしまいなのかも
日本語の「さよなら」は
おかしな響きだね




ラブホのネオンは
誰に自己主張をしているのか
少なくとも貴方ではないわ、と
3.2cmのピンクのネイルの鎌鼬
俯きながら歩く人間は俺だ
似合わないピンクのクロックスも
原色のLEDが全部溶かして

滑走路をぐるぐる回っている
羽根がなければ飛ぶこともない
空に浮かんでいく星が
くらくらと俺の背中の影を映す
「ガデス!」
細い指で切り刻む空間
クロールのようには前に進めない
空を飛んだら
誰の名前を呼ぶかは決めている
ずっと前
生まれる前から
決めているのに

コントラストの高い夜
あれは誰の希望だろう
ふぁんと一回クラクションが鳴って
意気地のない奴が轢かれている
ネクストバッターに立ったつもりで
何度もバットを振っている
13cmの希望
…あるいは無用の長物なのかも
8月7日、ミルキーウェイ
10ccの深い河

俺に未来がないとするなら
1秒後に見るこの景色は何なんだろう
過ぎ去っていく最終電車
意気地のない奴が死んでいく
電車の後ろ足に砂をかけられて
ただの影になって消えていく
眩しく見える月だって
君には何の変哲もない
安物の間接照明だって

手を取れば
世界中の全て
がつながってると思う
そうしてそれも
インディゴの海に融けてゆく
何処かへ連れ去ってもいいのかもしれない
でも、

さよなら、
と呟けば
2つの影はネオンと共に消えて
白い液体が2人を轢いていく
星になるのは
俺だけ
で良かったはずなのに


そうして目を閉じれば
364日の夢のはじまり
また君の名前を呼ぶのを
忘れそうな暑い夏
ここからでも分かるよ
君も発光しているのが
あそこで俯いているのは
誰の希望だろう?


自由詩 8月7日(七夕) Copyright ピッピ 2011-08-08 19:30:08
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