ヤドリギのひと
恋月 ぴの
何かの工場でも移転したのか
住宅街の真ん中にあられた大きな空き地
その空き地を取り囲むようにはためく斎場反対の白抜き文字
いつまで運動は繰りひろげられていくのだろう
はちまちをした町会の面々
遅かれ早かれ斎場が必要となる歳になっているはずで
よそ者だから許せないってこともある
※
Tomodachiであったとしても
用が済めば早々にお引き取り願いたい
感謝をこめた挨拶はやっかい払いってこともある
家族ができて
生活環境が変わってくれば
次第次第と都合の悪いこと煩わしさはひとしおで
もっともお金が総てってこともありそうな
※
ときには実の母でさえ鬱陶しくて
どらえもんのポケット
ひとの本音かも知れない
※
わたしの思いを知ってか知らずか
いっこうに責任を取ろうとしないあなた
どこまでが本当なのか
どこからが嘘なのか
悔しさに達するでもなく萎えたペニスをきつく掴む
※
その空き地の近くには親水公園がある
釣りもできるようになっていて
近くのお年寄りだろうか日がな釣糸を垂れている
白鳥の脚に仕掛けが絡まないだろうかとか
そんな心配など飲み込むかのように黒い雲湧き立ち
パラパラと大粒の雨降りだした