洛陽は落陽の果てにあって
石川敬大




 日本海にしずむ
 落陽は
 おおきくて美しい
 と、ラジオでだれかが言った

      *

 かつて
 五島灘にしずむ
 落陽を
  ―― オレンジ色のおおきな
     落陽だった
 しずむ
 しずんでゆく
 落陽
 を
 むちゅうで
 シャッターを押しつづけていたことがある

 むちゅうとは
 われをわすれること
 われをわすれて対象に没入すること
 なんというしあわせな時間だったのだろう
 われを、わすれ、られて

      *

 身体を
 いまよりさらに傾ける
 ちょうど馬をぜんりょくで駆るときみたいに
 クルマをはしらせる
 日常がすこしだけかわる
 クルマは
 ぼくの意識体である
  ―― そうやって
     ぼくは
     生きてきたのだとおもう

      *

 傾いて
 傾けて
 ぜんりょくで
 羽根が
 ひらくしゅんかんが、ぼくにも
 くるのだろうか
 あのテントウムシみたいに






自由詩 洛陽は落陽の果てにあって Copyright 石川敬大 2011-08-07 11:29:39縦
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