創書日和【蒸】ライブスチーム
大村 浩一



日曜日の11時
生き延びた僕らは
模型機関車の運転会に出かけた
会場のツインメッセは
石炭や油の排気ガスの臭いが立ち込めてきつかったが
子供達を乗せたC56型やロケット号が快走し
それなりに楽しかった
やたら汽笛が鳴らされうるさいのに
娘が乳母車で寝入ってしまったので
妻と私は露店でビールを一杯
会場には模型メーカーも出展しており
お約束のゼロ戦や戦艦大和もあった
そう言えば復元したC61型のTVドキュメンタリーで
監督は「機械が人類の希望だった時代の象徴」などと
機関車をたたえていたが
同形式が製造されたのは昭和22年以降
機械文明が人類を絶滅し得ると分かってからの製造
つまり片目をつむったまま繁栄を驀進してきた
彼女ら機関車が走った常磐線は
いまも断たれたままだが
さし当たり生き延びた僕らは
陽光の下でこれからの事を思いながら
娘が目覚めるのを待っている


2011/7/31
大村浩一


自由詩 創書日和【蒸】ライブスチーム Copyright 大村 浩一 2011-07-31 22:14:21
notebook Home 戻る  過去 未来