心星
あおば

             110720

            
トコロテンでごはん
辛抱おし
半時ぐらいは
保つでしょう
お母さまは
まだお帰りにはならないのです
白黒のテレビが片隅に置いてある
幼い眼に映る目玉汁の虚ろな揺らぎも
えふぶんのいちに従っているのか
遠くの鐘がじ〜んと鳴り
寝惚けた蝉もジッと鳴く
乾いた歩道を目で追うと
千鳥足の小父さんが
お稲荷さんの鳥居に凭れ
息を整え座り直し
帰宅前の儀式のように
袂からお土産の笹かまぼこを取り出し
左手にぶら下げる
やおら立ち上がり
数軒先の軒下に立ち
いつもの調子で戸を開けた
夜も更けてゆくと
小腹が空いて
笹かまぼこも寝所を得るのに
眼をギラギラしてばかり
天井を見つめ
一晩中一睡も出来ないとは
どこの誰に似たのか
因果な性分だねと
手の掛かる子を持った母は
老いたメガネをかけ直す
夜はまだ始まったばかりというのに
照度計の数値がぼんやりとして読み取れない
節電もほどほどに・・
声にも出せずに呑み込んだ
(一晩くらいは保つかもね)







「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、小原 明季さん






自由詩 心星 Copyright あおば 2011-07-20 21:19:52
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