地に伏せた付箋
佐々木妖精

整列する人の群れ
視線を避け動き回る目とうつむくつむじ
肩車に疲れた身体を寄せ合い、互いを委ねているのか。汗を擦り付けているのか。
手を垂直に伸ばしたところで、いまだ雲すら掴めない。

地平線が見えないからって
わたしの背中の前で泣かないでください
わたしの背中の前で泣かないでください
服が汚れてしまいます
よごれてしまいましたよ?

海へ行きたいですね
みんなで泣けば迎えにきてくれますか
夏の重厚な空気を汗で沈めていけば、冷たく沈めてくれますか。
堕胎と自殺の間で揺れていますが、目の前のばあさんがそろそろくたばりそうです。
どうしましょうか
電車はひどく揺れますし、双子の可能性も否定出来ません。
いっそ心中話を持ちかけようかと思うのですが、口説き文句が浮かびません。
最大限の譲り合いの結果、空いたスペースにすかさず赤子をねじ込む母と目撃した私はそれを愛と思いました、たただずっとうつむいていたおかげで、床と話せる気がします。
「最低限争おうって言えば英雄になれるよ」って。なるよって飛んでって。
肌色の地表を俯瞰する透明な翼は、ますます軽くなり重さに耐えかねて息遣いが恋しくり、多くの衛星を引き連れ、ついには星になる。
恒星を探すのに疲れたけど、顔をあげるとぶつかりそうでこわいね。
地球は丸いからぶつかっても痛くないよ
って、叫んでみようか。


自由詩 地に伏せた付箋 Copyright 佐々木妖精 2011-07-19 00:49:46
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