コンクリィト製の堤防から見渡す故郷の印象
塩崎みあき

活動しない雲は
たいてい灰色をしている

海の上に
面倒くさそうな
固形物が
存在する

白い犬
がそれを見ている
黒い少年
がそれを見ている

そんな淀みの中の
なんでもない街
くらいに
矮小な存在は
もっぱら
アルミ缶から湧き出す虫
より
つまらない存在

海を描くための
絵の具の選択方法が
最初に
青の人か
赤の人か
茶の人か
緑の人か

どうでもよくて
三角形の波に
心を奪われている
冬まで
しか知らない
白い犬
黒い少年

の鋭い
シルエット
に嫉妬するくらい

事務デスクの
空間構成
の窓から少しだけ入る
北側自然光に
事務用ホチキスと
台風の夜の
雨戸の
小さい破れの
記憶の
においがあって
そこで
純粋に
流れている
鈍い時間
の憧れの

白い犬達
黒い少年達

また
朝とも
夕ともいえる
雲の市
また
星の無い
また
そして
ひとつの
会話が
小さく
なってゆく
最小
ボリュウム




自由詩 コンクリィト製の堤防から見渡す故郷の印象 Copyright 塩崎みあき 2011-07-09 21:53:06
notebook Home 戻る