七月、土曜日の真昼
橘あまね

満ち潮が新しい雲を率いてやってくる
ねむの木の下にしゃがんでいたら
スイカと蚊取り線香の色がただよってきた

知らんぷりしているようで、世界はやさしい
ふとんを叩く音 野菜を煮る音
自販機でサイダーが買われる音
洗濯物が回る音 
自転車の急ブレーキの音
階段をおりる音
室外機たちのうなる音
ぜんぶつながって聴こえるのは
きっと湿度が高いせいです

近くて遠い営みたち
手がとどきそうでとどかないのが
どうにも歯がゆくて
ねむの花に恋してるそぶり
かかわりあうことがまだ怖いから
浮ついた夢をみている

国道を駆け抜けていく
強いエンジンのひびき
雨雲に追いつかれないように
高まる季節に置いていかれないように



自由詩 七月、土曜日の真昼 Copyright 橘あまね 2011-07-07 23:09:42
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