飲み込めない話
山田せばすちゃん

☆最初の女の子

こくりと喉を鳴らして
彼女はそれを飲んでしまった
喉に引っかかるのか
小さな咳を繰り返しして
それからにっこりと微笑んで見せた

「おいしくはないよ、おいしくはないけれど
 すきなひとのだとのんでもいいかなっておもうし
 のんであげるとみんなうれしそうなかおするじゃない?」

僕はみんなの中の何人目だったのだろう





☆二番目の女の子

「ごめん、だしてもいい?」と
彼女は僕が差し出したティッシュの束の中に
口に含んでいたそれを吐き出した

車のフロントガラスは吹き付ける雪で真っ白で
ジーンズを穿き直してジッパーを上げて
僕は車を公園の横の暗がりから出した

「なんかのどにひっかかりそうでだめなのよ
 あったかくてどろっとしてるのってさ、ごめんね」

コンビニで車を止めて飲み物を買おうと
彼女に何を飲みたいか聞いてみる事にした
あったかいコーヒー?それともミルクティ?

「あー、じゃコーンポタージュスープがいいなあ」

何か納得がいかなかった

  



☆三番目の女の子

真っ裸のまま彼女はそこに顔を埋めて
ああ、と僕が呻いて果ててしまうまでずっと
その口を離さなかった
無言で顔を上げた彼女はそのまま
僕に抱きついてきて
いとおしくなった僕は
彼女に頬擦りをしてそれからキスを

僕の口の中に彼女はそれをおもいっきり吐き出して
たじろぐ僕をうれしそうに見ながら言った

「おもいしったか」

はい、思い知りました、こんな味だったんですね


自由詩 飲み込めない話 Copyright 山田せばすちゃん 2011-06-11 01:52:05
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