夕暮れのひと
恋月 ぴの

ちびっ子がちびっ子だった頃


男の子は半パンにランニングシャツ
女の子はノースリのワンピとかで原っぱを駆け回っていた

いじめっ子、いたことはいたけど
みんな等しく貧しんだって思いでお互いを支えあってた気がするし

長袖シャツを着てないと危ないなんて誰も言わなかった


ちびっ子がちびっ子だった頃


大人たちは内輪もめ繰り返してはいたものの
8月6日は核兵器廃絶を願う人々にとって忘れてはならない日だったし

いつもコールテンの上着羽織ってた先生は
君が代よりも大切なものがあるとわたし達に語ってくれた


ちびっ子がちびっ子だった頃


ノースリのワンピたってお母さんが仕立ててくれたあっぱっぱで
ストンとした裾をパンツの中に押し込み
日の暮れるまで男の子達とザリガニ釣りに興じていた

糸の先につけたスルメイカで面白いほどにマッカチンが釣れて
ブリキのバケツの中は大きなハサミで蠢いていた


ちびっ子がちびっ子だった頃


わたしには帰ることのできる小さな家があって
前掛けをしたお母さんがわたしの帰りを待っていた






自由詩 夕暮れのひと Copyright 恋月 ぴの 2011-06-06 19:42:54縦
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