ロボット店員
村上 和

前に人から聞いた接客の話
コンビニに行く客は店員に無関心を求めるのだという
だからやたら愛想のいい人よりも
少し無愛想な人を雇う方がいいそうだ
(コンビニバイトの面接で愛想がないと落とされた彼の負け惜しみかもしれないが)
確かにコンビニの店員が
両手を擦りながら満面の笑みで商品を勧めてきたら
困ってしまうだろうなあと納得した
じゃあ私はコンビニの店員向きだねと言うと
お前は無愛想すぎると彼は上手に笑った
(同じ笑顔のまま未来のコンビニは全てロボットで回るようになると彼は言っていた)

そんな話を思い出したのは
(自宅から徒歩二分ほどの信号を一つ渡った場所にある)
よく行くコンビニで
会計をしている時に店員に話しかけられたからだ
とても優しい喋り方をする人だった
(彼はきっと同じ口調で恋人に話しかけたり愚痴や不満を口にしたりするのだろう)
接客の域を超えて話しかけられるのは初めてで
私は少し戸惑いながら曖昧に返事をする

会計と店員とのぎこちない会話を終え
募金箱に数枚の硬貨を落としてコンビニを出る
自動扉が優しく開いた瞬間に
雨上がりと太陽の匂いが混ざってほのかに香った

マイバッグをぶら提げて
帰りの赤信号を待つ間
私が店員に向けて作った笑顔は
(誰かが作ったプログラム通り)
上手く笑えていただろうかと
そればかりが気になっていた


自由詩 ロボット店員 Copyright 村上 和 2011-06-05 19:42:00
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