まにまに
nonya


引っ掻き傷のような雨に
ふやけていく街の輪郭を
見ているようで見ていない
雨のまにまに
彼女の打算

蒸留水のような嘘が
グラスのふちを伝うのを
見ていないようで見てしまう
雨のまにまに
彼の誤算

自分の夢を叶えることだけ
考えていればいいんだよ
天国への螺旋階段なら
いくらでも買ってあげるから
雨のまにまに
彼の晴れ間

バイトのシフトが変わっちゃって
なかなか会えなくてゴメンね
オジサンなんて思ってないよ
あなたといる時が一番落ち着く
雨のまにまに
彼女の雨宿り

彼が焦がれた
彼女の真っ直ぐな視線は
雨をすり抜け
街をすり抜け
彼をすり抜け
分厚い雲に跳ね返って
おそらく
自分すらすり抜ける

忘れていたはずの埋み火を
消し去る術も覚束ないまま
見えているようで見えっこない
雨のまにまに
彼の水溜り




自由詩 まにまに Copyright nonya 2011-06-04 11:42:22
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