隠すひと
恋月 ぴの

姿見に映すわたしの姿
ぷくっと気になる「部位」がある




肩甲骨を意識して
立ち姿に気をつけてみた

たとえばモデルさんみたいに片足を気持ち後ろにずらす

それなのに元カレに似たひととすれ違ったりして
深いため息でもついたとしたら
元の木阿弥、胸を張って生きるって難しい




今年の新作水着
へえっ、こんなにもおしゃれなんだあ

すかさず手にとってはみても
やはりあの「部位」が気になって陳列棚へ戻してしまう

目ざとい店員さんがお似合いですよとまくし立てるので
慌てふためき逃げ出すように店を出た

ショウウインドウを掠めるわたしの姿
現実を直視しないのが幸せのこつだったりして




単なる「部位」に違いないのだけど
これこそ。わたしの総て

どうぞと席を譲られても困ってしまうし
無理なダイエットはリバウンドが怖い

おんなものの傘があくまでも華奢なように
ひとりで生きられない女でありたいものだけど

誰も気付いてはくれないみたいで




見てくれだけが大切なんだよね
いざとなればパッド入りの勝負ブラがあるし
半ばだまされて買った補正下着だってある

物事の本質なんて誰ひとり求めてはいないのだから

姿見に映すわたしの姿
ここぞとばかり大胆不敵な見得を切る








自由詩 隠すひと Copyright 恋月 ぴの 2011-05-30 19:18:38縦
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