白濁
あぐり




この雨が
あの町からきたものだと信じたいわたしは
ただむせかえる白さのなかにいます

微笑むそれに似た
レンズ越しで息を吐き出しながら
なにも見つめたりしないでいましょう
調べたりしないし
教えてくれもしないけど、
涙って濁ってるんだって
そんなことぐらいはわかって生きています

まぶたをおろしてしまえば
自分の瞳ばかり見つめるいきものになるのですこしだけ、
ひらいていることにして
その日その日を目立たぬように泳ぐのです
いたまないことだけを考える
そういう、なんの、意味も理由も価値もない物に
なることがやっぱりいちばん難しいから
耳障りな呼気が拾われないように泳ぐしかないのです

ななめと、すこしした
むせかえる白さのなかにいます
やまないのならそれでもいいから
わたしが吐く計算や理由にまみれた名付けたくない呼吸をおさえつけるように
もうふってくれたらいいのです
やさしくされれば誰でも愛せるような
そんな美徳ぐらいしかあなたには差し出せないので







自由詩 白濁 Copyright あぐり 2011-05-28 22:45:14
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