夜明けを占う
たちばなまこと

けだるい床に敷かれたままの寝具が
なだらかな山を見せ
私は脚を崩し
あなたはインドの仏さまのように
片腕で頭を支え横になっている
輪郭だけを知っているつもり
ぬくもりに残像を刷る朝
( もう少し知りたいのかな )

朝の街
つららの花に
ひかりの束を捧げ
ウールのポケットに両の手を入れたまま
歩道橋を渡る
開店前の洋食店に
玄関の走り書きを投げ込む
俗っぽいカウンターに注ぐ冬が
くるしい所作でまぶしがる

ああ、誰か
その文をひろげてください
私には誰もいないのです
あなたのように逝かないから
一度だけ死なせてください
深い眠りには
薔薇が咲いていましたか
私なら
あなたと旅した丘の一面を
芍薬で埋められたらと思います
たとえ、誰かに
届いたとしても
返事が来ないことが普遍になるなんて!

拾った小枝にまだ見ぬ占いを結んで
昨日降りてきた卵に
真実を1ダース
ゆるんだ口もとの車両が行き交う
半貴石のおしゃべりも
詩的とは呼べず
あなたは誰かの誰かでしかなく
愛なんて、
もう。


自由詩 夜明けを占う Copyright たちばなまこと 2011-05-28 11:36:20
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