ベビースター
電灯虫

丸い海岸線の向こうから はたまた山の背後から
満点の星空に向け 数秒の誤差を生みつつ 
絹で編まれた 綺麗なレースが 開かれていく。
アーチを描いて 向こう側に消えていく。
北半球から南半球まで 恐らく同じ光景が描かれている。
こちらは夜だけど 
晴れた昼間や 曇り空だと どう見えるのか
欲張って 全部の空で 見たくなる。


よく考えたら とても大変な現象なんだろうけど
メルヘンらしさが 大人たちを慌てふためかしている。
専門家がいるとも そもそも 思えないけど
原因を探るのは 野暮ってもんだ。
近所のおっちゃんが 言っている。
私は江戸っ子じゃないけど 
激しく 同感です。
おっちゃんと 会釈と笑顔を交わして
まだまだ 飛んでいる 今の夜空を見てる。


ほんの鼻先で 小さく展開する レースがある。
小さい子が 大人に混じって 参加しているのか
投げられたレースが 地面に転がってる。
出発点は やはり 見えない。
一生懸命だけど 向こう側には届かなかった。
そのレースから 決して邪魔をしないように 
その一部をちょいと拝借する。
不思議な弾力に包まれていた。
模様の所々に 拙さがある。
急な 親近感が わく。
自画自賛だけど
理科室の骨格標本にしたら似合うと思ってる 
綺麗な私の頭蓋骨。
そのアーチをイメージして 形を整える。
ティアラみたいに そっとのせる。
確認しなくても どうせ 似合ってる。
鏡要らずの 確信を持って
すぐそこの駄菓子屋で
ベビースターを買って つまみながら
もういっちょ
理由のない 夜空を囲む レースの軌跡を追う。


自由詩 ベビースター Copyright 電灯虫 2011-05-22 12:31:36
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