パーソナルスペース
塩崎みあき

借りたてのアパートの
白い壁の
ざらざらした
感触に
うつろな視線を投げかけている
手のひら

からはじまる
小さいメソッド

何時間も壁ばかり見つめています
することがないので
実際はすべきことたくさんあります
でもみんな消えてゆくんです
ぷくぷく泡のようです

触ってもないけれど
壁のざらざらが
1ヶ月経つと丸くなる

アパートが
丸くなってゆく
家具たちは
人のシルエットに変わるとき
ベットは腰
本棚はひざ
机は腕
ごみばこは顔

手のひら切断されています
することがありませんから

ある人がある人のことを
無能だと思っている
よく失敗して迷惑だと思っている
ばかだと思っている
役に立たないと思っている
のろまだと思っている
信頼に欠けると思っている

内蔵にそれぞれ役割があるように
空間にも役割がある
2ヶ月経つと
それがはっきりと決まってくる
内蔵機能がしっかりしてくると
物など
置きだす
とりあえずは
まずは
といったふうに

守るために

ある人がある人に
許してほしいと思っている
認めてほしいと思っている


自由詩 パーソナルスペース Copyright 塩崎みあき 2011-05-20 12:34:44縦
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