深紫のひと
恋月 ぴの

お疲れさま♪

優しく声をかけたいのだけど
つい嫌味な言葉なんかを付け加えてしまう

どうしてなのかな

額に汗かいて努力したのはあなただし
わたしは洗い物とかしながら眺めていただけ

たとえば食堂の椅子とか作っていて
脚の長さ揃わないからとノコギリできこきこしてたら
あれま、椅子のつもりが座椅子になってしまったよ

そんな失敗だとしても可愛いもので

あなたにしては上出来だよって褒めてあげたいのに
ぷいぷいとケチをつけたりしてさ
これも好きって気持ちのあらわれなのかも知れないけど

真剣なあなたの横顔をいつまでも眺めていたい

で、タオルとか差し出しながら
お疲れさま♪
よく頑張ったよねって言ってあげたいな

「頑張れ!」っじゃなくて
「頑張ったよね」

いつのまにか仲直りできたようで

おそろの座椅子からふたりして脚を投げ出してみたりすれば
お隣さんの庭先までわたしたちの彩りで

紫陽花の深い色合いに
カタツムリになりたかったあの頃とかを思い出す






自由詩 深紫のひと Copyright 恋月 ぴの 2011-05-16 19:21:52
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