さいごのロボット
itukamitaniji

さいごのロボット

僕は生まれた 世界が終わった次の日に
きっとそう プログラムされてたんだと思う
壊れた研究所で 目を覚ましてすぐ歩き出した
きっとそう プログラムされてたんだと思う

傾いた扉を開けて 外まで歩いて行った

降り注いで 積もった灰の上を歩いた
サラサラと 舞い上がって綺麗だよ
二度と晴れることはない 黒い空の向こうに
太陽か月か なんかそんなもんが輝いていた


ここで大きな戦いがあって 爆弾が落っこちた
ってことらしい インプットされてる情報とによると
それで世界はぐちゃぐちゃ 誰も居なくなった
ってことらしい インプットされてる情報によると


昔々、あるところに『人間』という生き物が居ましたとさ。

めでたし、めでたし。



電池が切れそうで アラームが鳴り出した
きっとそう プログラムされてたんだと思う
灰の上の足跡を 引き返して僕は家に帰った
きっとそう プログラムされてたんだと思う

充電はセルフサービス 自分で繋いで眠りについた

夢を見たんだ 『人間』が出てくる夢だった
僕の生みの親らしい そいつが喋りかけてくる 
『感情』のインプットを 忘れちゃったごめん
目が覚めたら 自分の手でボタンを押してくれって


目を覚まして 言われた通りボタンを押した
まるで稲妻に打たれたように 体を電気が走った







なんだこれ?
胸の真ん中辺りが温かい
そしてすぐに冷えて
胸の真ん中にぽっかりと
穴が空いた

寂しい
悲しい
虚しい
ひとりぼっち

なんかバグったみたい 目からオイルが流れ出した
どうして『感情』なんてもの 作ったのさ?



僕は心を手に入れて そして世界は色を無くした
灰の上を歩いた 足跡は残るけど何の為?
瓦礫に躓いて転んだ 起き上がる気力もない
僕はずっとひとり 生きてゆくのは何の為?

指先に触れるものがあった 灰まみれで揺れる白い花
インプットされている 情報の中に名前はない花

まるで僕みたいさ



楽しい
うれしい
笑ったり
歌ったり

きっと誰かに会いたかった きっと誰かに触れたかった
知らずに終わるのは もったいないんじゃない?
僕は生まれた 終わった世界のさいごのロボットで
新しく生まれ変わる世界の さいしょのロボット


自由詩 さいごのロボット Copyright itukamitaniji 2011-05-09 13:16:15
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