失語
高梁サトル

眼を閉じて
碧と藍が交わる水平線を探すとき
きっとそれが
二人を隔てたはじめてのものだと思った
そのあわいの水面を撫ぜる風の音
海鳥の声が窓辺に届くたびに
傾ける耳の奥に渦巻く暗い思い出
深海に沈んで横たわる結晶は風化することがない
浸した蒼い指先の輪郭が薄れ
街角の標識が塗り替えられて
朝ごと昇る太陽が
生まれ変わったかのように感じても
美しく感じるそれはそう望む私自身のものだと
知っている
未知はここにない場所から生まれる
無知はここにあるものをあらわす
手放さなければならなかったものたち
まばゆい楽園は愛を語る
あなたのなめらかな幸福が
骨になった過去を責めて
どうやって交わることができるだろうかと
苛まれる日々をご存知だろうか
失くしたものは取り戻せない
ならば私は生きるために
生きるために選ばなければならない
それさえも許されないのなら
存在する鼓動も涸れ果てる他ないと


自由詩 失語 Copyright 高梁サトル 2011-05-04 09:40:42
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