レストルーム
山中 烏流


それは腕でした

ベッドは空を飛ぶいきものになったので
わたしのライフカードからは
にんげんが外れました


それは腕でした

ブランケットの内でまどろむわたしを抱き
耳を塞いで
窓を越えました





彼はいきものです
わたしもいきものなので
来年の今頃には
いきものが生まれます


這い出してくるへりはしらに唇を咬んでも
空が白み行くことに変わりはないので
これから、の話をすることは
既に
意味がありません





それは腕でした

やがて、たどり着いた水面で
わたしの唇を濡らしながら
緩やかに掻き出しました


それは腕でした

戻すものも無くした背を撫でながら
合わさる呼吸の果てに
瞼に糸を渡しました










眠るわたしの傍らに

空が、近づいてきます







自由詩 レストルーム Copyright 山中 烏流 2011-05-01 22:10:03
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