春の雨
高梁サトル


彼方から
彼方へと還ってゆく、おと
されて
なにも知らされず
秘めやかに処理されてゆく 、あ、
、あ、あなた、 を、
忘れられず
浮かび上があがった泡に
触れるたび産まれる
声はまだ
正しい発音を知らずにいる(あわいくちびる
それはあなたの
やわらかい膜さえ破れずにいる(よわいゆびさき
それはあなたの
沈黙を紡ぎ続けている(うれいおびたまゆ
それはあなたのもの
だれのものでもない
わたしの
、もの

流れる花鳥のうたを
楽譜に留めるちからさえなく
戸惑う
うつくしい季節に
居場所を見つけられない
色褪せた景色を手渡して果てる
しあわせな夢の合間に
しろいため息が梢に灯る
明け方
眼差しを導く
なめらかな虹の螺旋
永遠に届かない
 、あ、
あ、あなた、 の、
背中が雨霧に霞む
陽が昇り
まぼろしが尽きる頃
ほどけてゆく今日という問いに
繋ぎとめられた
明日が
ゆるされてゆく


自由詩 春の雨 Copyright 高梁サトル 2011-04-24 08:00:07
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